den’s blog

気まぐれ日記

「東京百景」を読んで


少し前に購入した「東京百景 (著)又吉直樹」を読んだ。

 

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東京百景 (著)又吉直樹

筆者の思う東京、筆者の見てきた東京が描かれている。

冒頭、「しかし、これが僕の東京なのだ。」という文があった。僕の東京という表現は、どのガイドブックよりも私の興味をそそった。筆者の見てきた東京は、私が3年間住んできた東京とはまるで違った。人間という感じがした。観光地の供にはならなくても、この本を携えて東京を巡りたいと思った。

 

他のひとから見ることのできない筆者の世界が、果てしなく広く魅力的だった。自分で考えて、自分で決めた道を進む。私は、この言葉の意味を「たとえ間違っていても、自分で決めることが重要なのだ」と解釈していたが、彼の文章を読んで、そもそも間違いなんてないのではないかと思った。彼が見た東京は、間違いなく東京であり、私が見ている東京も間違いなく東京である。

 

「自分がどのような状況に置かれていても、自分が感じたこと、自分が経験したことは決してなくならない。

自分で好きな道を選んでいいときは遠慮しない。誰にも気なんて遣わない。その代わり大人になった今、全ての責任は自分にある。」

 

ふと、高校時代の恩師のことを思い出した。その先生は、高校時代のマラソン大会の話をしていた。詳細は曖昧だが、とにかく面白い話だった記憶がある。筆者も先生も、私の好きなアーティストも、学生時代の話をする。新しい情報も教えてくれる、けれども彼らの昔の話も沢山してくれる。それら一つ一つの経験が、今の彼らを成り立たせているのだと感じる。過去にとらわれているのではなく、過去を財産として今を生きている、その感じが私はたまらなく好きなのだと思う。

過去は過去だけれども、その過去を経て今があるこの事実に変わりはない。過去にとらわれる必要はないかも知れないが、同時に過去を忘れる必要もない。

本の感想からそれたが、自分が好きになる人の共通点がひとつ見つかった気がして少し嬉しくなった。

 

そんな記憶をも思い出させてくれるこの本を何度も見返しながら、自分なりの東京を作ってみたい。